コラム
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BCP実践促進助成金の対象者・申請方法と対策のための補助金制度

BCPの策定を検討している方に向けて、BCP実践促進助成金について解説します。

会社の経営環境に不測の事態が発生した時にも事業継続ができるように計画するBCPですが、具体的に事業継続力を向上させるためには設備投資が必要な場合もあります。
そこで知っておきたいのが、「BCP実践促進助成金」や、BCP対策で受けられる補助金制度です。

今回の記事では、BCP実践促進助成金の申請方法や要件、BCP対策の際に活用できる補助金制度についてご紹介していきます。
参考にしていただくことで、今後の対策に役立つでしょう。

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BCP実践促進助成金とは

「BCP実践促進助成金」とは、自然災害などの予期せぬ出来事が発生したときに、事業を継続できるよう支援するための助成金です。公益社団法人東京都中小企業振興公社によって実施されています。

主に中小企業がBCPの策定のため、物品や設備を購入する経費の助成を目的とした制度です。

たとえば有事の際の従業員のための食事や飲料水、衛生用品、設備の転倒を防止するための装置を整えるにはコストがかかります。

東京都中小企業振興公社では、企業の防災力強化のため、助成金制度を利用して金銭的支援を行っています。

また、「BCP」とは「事業継続計画」のことを指します。何も対策をしていなければ、自然災害、火災、テロなどに見舞われたときに、事業継続は困難になるでしょう。

しかしBCPが策定されていれば、有事の際にもいち早く事業の復旧に取りかかれる体制を整えられます。

BCP実践促進助成金の助成率と限度額

そしてBCP実践促進助成金は、有事の際にも企業が事業復旧できるよう、企業が体制を整えるために与えられる助成金のこと。助成率や限度額は次のとおりです。

項目 内容
助成率 1/2以内(小規模企業者では2/3)
限度額 1,500万円
申請下限額 10万円

出典:東京都中小企業振興公社:BCP実践促進助成金

限度額1,500万円は、基幹システムのクラウド化への助成上限である450万円を含みます。申請年度によっては、上限額や助成率が変更される場合があります。

また1事業者で使用する「単独型」と複数事業者で共有する「連携型」の2つの申請タイプがありますが、連携型は中小企業のみが対象です。

申請要件

申請要件は、単独型と連携型の申請タイプにより異なりますが、BCPの作成は必須です。

対象者

申請できる対象者は以下のとおりです。

類型 対象者
単独型[1]
  • 中小企業者
  • 中小企業団体
  • 個人事業主
  • 小規模企業者
連携型[2]
  • 中小企業者
  • 中小企業団体
  • 個人事業主

連携型では小規模企業者は申請できませんが、単独型であればより多くの企業が利用できます。

要件

続いては要件です。

類型 要件
単独型[1]
  • 「BCP策定支援事業」「事業継続力強化計画」のいずれかによって作成されたBCPを作成し提出できること
連携型[2]
  • BCPを作成し提出できること
  • 「連携事業継続力強化計画」の認定を受けていること
  • 認定時と代表者が同じであること
  • 参加者が認定時に参加していたこと
  • 代表者は参加者と共同で事業を実施し、申請、審査、完了報告、運営、管理を行うこと
  • 参加者も審査や完了検査に対応できること
  • 助成対象が参加者間での取引ではないこと

BCPの作成には条件が設けられています。「BCP策定支援事業」による支援を受けたこと、もしくは「事業継続力強化計画」の認定を受けたことなどです。

事業継続の要件

事業継続と営業拠点の所在地も要件の一つに含まれています。

類型 事業継続の要件
単独型[1]
  • 都内で1年以上の事業を行っていること
連携型[2]
  • 代表者と参加者の過半数が都内で1年以上の事業を行っていること
  • 該当しない場合は参加者が東京都以外の首都圏で営業していること

※基本的に都内で営業している企業であれば申請可能。連携型は参加者全員が関東エリアで営業していることが条件。

その他の要件(共通)

類型 事業継続の要件
単独型[1]
  • 都内で1年以上の事業を行っていること
連携型[2]
  • 代表者と参加者の過半数が都内で1年以上の事業を行っていること
  • 該当しない場合は参加者が東京都以外の首都圏で営業していること

※基本的に都内で営業している企業であれば申請可能。連携型は参加者全員が関東エリアで営業していることが条件。

その他の要件(単独型・連携型 共通)

  • 以前にBCP実践促進助成金を受けていないこと
  • 同一内容で他の助成金や補助金を受けないこと
  • 金融業、保険業、農林水産業、風俗関連業、ギャンブル業以外の業種であること
  • 東京都や公社への支払いが滞っていないこと
  • 過去の助成事業で不正がないこと
  • 過去5年において「起業家状況報告書」「実施結果状況報告書」を期日までに提出したこと
  • 助成事業継続の確実性が高いこと
  • 休眠会社でないこと
  • 公社が助成に適切だと判断した業態であること

細かな要件も定められているため、募集要項を十分に確認した上で申請してください。

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助成対象エリア

助成対象エリアは、単独型の場合、東京都のみとなっています。
ただし連携型の場合、参加者の半分以下が関東エリアで営業をしていても認められます。

【連携型対象エリア】

  • 東京都
  • 神奈川県
  • 埼玉県
  • 千葉県
  • 茨城県
  • 栃木県
  • 群馬県
  • 山梨県

連携型であっても、代表者は東京都内に本店または支店を有している必要があります。基本的に東京都内で営業をしている対象者であれば申請可能です。

申請スケジュール

それではBCP実践促進助成金の申請スケジュールについて見てみましょう。

令和6年度 の申請スケジュール

令和6年度の申請スケジュールは次のとおりです[1][2]。

申請期間
第1回 令和6年5月13日 9:00 ~ 5月17日 17:00
第2回 令和6年9月9日 9:00 ~ 9月13日 17:00
第3回 令和7年1月8日 9:00 ~ 1月15日 17:00

年度により申請スケジュールは変わるかもしれません。
しかしいずれも、月曜日から金曜日までの1週間が申請受付期間となっていました。交付の決定はおよそ2か月後です。

令和7年度の申請スケジュール

これから募集が始まる令和7年度の申請スケジュールは次のとおりです[3]。

申請期間
第1回 令和7年5月14日 9:00 ~ 5月20日 17:00
第2回 令和7年9月10日 9:00 ~ 9月17日 17:00
第3回 令和8年1月7日 9:00 ~ 1月14日 17:00

確定しているのは第1回のみで、第2回・3回は予定です。予算の状況により早期終了する場合もあるため、募集が始まったらすぐに申請できるよう準備しておいてください。

BCP実践促進助成金申請の流れ

申請時のスケジュールについてもご紹介します。

【スケジュール[1][2]】

  1. 連携事業継続力強化計画、事業継続力強化計画認定、BCP策定支援事業のいずれかを受ける
  2. BCP策定
  3. 助成金申請
  4. 審査
  5. 交付決定
  6. 事業実施
  7. 完了報告
  8. 完了検査
  9. 助成金確定
  10. 助成金請求
  11. 助成金支払

BCPを策定したら、申請を行って審査を受けます。交付が決定した後は、事業を実施して完了報告を行いましょう。

完了報告の後には完了検査を受けてください。検査を受けて助成金が確定したら、請求をします。助成金の支払いをもって、手続きは完了となります。

申請方法

BCP実践促進助成金の申請は、「JGrants」による電子申請にて行います。
まず公社のホームページから申請書をダウンロードして、作成してください。次に、公社のホームページからエントリーを行い、電子申請受付期間に申請します。

2025年度の助成対象事業

2025年度のBCP実践促進助成金は、次のような事業が対象でした。

【対象事業[3]】

  • 自家発電装置
  • 蓄電池
  • 安否確認システム
  • 感染症対策のための物品
  • 従業員用の備蓄品
  • 土のう
  • 止水板
  • 転倒防止装置
  • データバックアップ用サーバー
  • クラウドサービスによるデータバックアップ
  • 基幹システムのクラウド化
  • 耐震診断

2025年の助成はすでに受付が終了しています。
しかし2026年度には同等の内容で助成が行われる可能性が高いため、次年度の申請に向けて参考にしてみてください。

BCP実践促進助成金以外のBCP助成金・補助金

BCP対策のための助成金や補助金は、BCP実践促進助成金だけではありません。東京都以外の事業所で活用できる制度もあるので見ていきましょう。

BCPの策定にかかる助成金

「BCPの策定にかかる助成金」は、東京都江戸川区に本社がある企業において申請可能です。助成上限額は20万円と比較的低いですが、講師派遣の費用や外部研修の参加費用も助成対象となります。

BCP・事業承継・経営改善補助金

「BCP・事業承継・経営改善補助金」は新潟県長岡市 で敷かれている制度です。新潟県長岡市内に事業所があり、1年以上営業を続けている中小企業が補助対象となります。M&Aによる引き継ぎや経営改善にも対応しており、幅広い企業が利用できます

事業承継・M&A補助金

中小企業庁による補助金制度として、「事業承継・M&A補助金」があります。事業承継やM&Aにより経営を引き継ぐ企業を応援するための制度です。

事業承継には専門サービスを利用することが多いため、専門家を利用した費用の一部が補助されます。

対象となるのは中小企業と個人事業主を含む小規模事業者のみです。専門家活用枠では補助率が2/3または1/2となり、上限は800万円となります。もし事業承継やM&Aを予定されていて東京にて事業を行っているなら、活用を検討してみてください。

BCPの策定に活用したい支援制度

BCP実践促進助成金を利用するには、まずBCPを策定しなければなりません。これから策定しようと考えている方に向けて、活用可能な支援制度を紹介します。

支援1:事業継続力強化計画認定制度

中小企業が策定した防災・減災に向けた事前対策の計画を、経済産業省大臣が「事業継続力強化計画」として認定する制度です。認定された中小企業は、次のような措置が受けられます。

【受けられる措置】
・税制措置
・金融支援
・補助金加点

上記の項目を見ると、BCP対策を行うことによって企業の経営面にもメリットがあるといえるでしょう。実際に70,000社を超える企業が認定を受けているとされています。

BCPを初めて策定する場合に取り組みやすい制度のため、BCP策定を検討している中小企業はまっさきに取り組みたいところです。

支援2:事業継続計画(BCP)の策定支援

BCP策定のための簡易様式を提供してくれる支援制度です。

事業継続計画を作成するなら、まずは公的機関のテンプレートを使用して作成するべきです。

たとえば中小企業庁の公式サイトでは、BCP策定運用指針やBCP策定に利用できる様式ファイルがダウンロードできます。

ダウンロードしたファイルを利用すれば、必要項目を記入するだけで事業継続計画を作成できるため手軽です。しかしテンプレートを使用しても、どのように記入すべきか…と迷う方もいらっしゃるでしょう。

そこでおすすめなのが「事業継続計画(BCP)の策定支援」です。記載例を参考にして作成すれば、よりスムーズに作成しやすくなるはずです。

関連記事:BCP(事業継続計画)策定のステップと押さえておきたいポイント

支援3:BCP策定支援融資

BCP策定に取り組む企業を対象に、支援融資を行う制度が、各地の自治体や金融機関で実施されています。

たとえば、群馬県では「群馬県BCP策定支援プロジェクト」を実施しており、防災対策の推進に必要な費用を助成・融資する仕組みを整えています。

そのほかにも、大阪府堺市では「堺市中小企業活力強化資金融資(有担保)」、神奈川県では「BCP策定支援融資」など、地域ごとに特色ある制度が設けられています。

さらに、日本政策金融公庫でも、BCPに関連した資金需要に対応する「BCP資金」の融資が行われており、全国の中小企業が活用可能です。

いずれも要件がありますが、設備資金や運転資金として活用できるため、BCP策定を進めたい企業にとって、非常に有効な支援制度といえるでしょう。

BCP実践促進助成金を活用して有事に備えよう

いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことでBCP実践促進助成金についてご理解いただけたと思います。 BCP対策を行えば事業継続力が高まります。

しかし、事業継続力を高めようとすればするほど、事前対応として設備投資などが必要になるため、補助金や助成金を活用して有事に備えましょう。

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[1]

参照:東京都中小企業振興公社:(PDF)令和6年度中小企業における危機管理対策促進事業BCP実践促進助成金【募集要項】

[2]

参照:東京都中小企業振興公社:(PDF)令和6年度中小企業における危機管理対策促進事業BCP実践促進助成金【募集要項】

[3]

参照:東京都中小企業振興公社:BCP実践促進助成金


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