コラム
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防災備蓄品の保管場所やスペースの作り方を解説

多くの企業や自治体が、倉庫の空きスペースや、使用していない空き部屋に備蓄品を保管しています。

しかし、防災備蓄品は、平時の管理の容易性(棚卸しや期限切れ備蓄の入れ替えのしやすさ)や、災害時に迅速に使用・配布できることが重要です。

この記事では、防災倉庫の中身や備蓄品を保管するスペースの作り方を解説します。

「備蓄品を買い増ししたいが置く場所がない」という方のために、効率的な保管スペースの使い方と備蓄品の保管方法を解説しますので、ぜひご覧ください。

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備蓄品を置く場所がない

多くの自治体や企業が、防災備蓄品の置き場所・保管場所に悩んでいます。

「緊急時にすぐ取り出せる必要があるから取り出しやすい場所に置いておきたい一方で、実際に備蓄品を使う機会はなかなか発生せず、いつの間にか倉庫の一番奥に入ってしまっている」といった悩みです。

「BCP対策として備蓄品を買い増ししたいがスペースがない」とお困りの防災担当者の方も多いのではないでしょうか?

倉庫の空きスペースや空き部屋に防災備蓄品を保管するリスク

地震などが発生した場合は、備蓄倉庫の取り出しやすい位置にある荷物が荷崩れを起こし、奥にある備蓄品を取り出すだけで大変な人手と労力が必要になります。
救助に必要な備蓄品などが倉庫の奥深くにあっては、人命にかかわる事態にもなりかねません。

地震などの自然災害が発生しても、台車等で倉庫の奥にある備蓄品を取り出しやすいように通路を確保しておくことが重要です。

倉庫の奥に備蓄品があると防災担当者の負担が増える

災害が発生しなくても、平時から備蓄品の管理をする必要があります。

備蓄品を保管する倉庫の通路を確保していない場合、防災担当者が備品庫の中で思わぬ重労働に追われることになります。

防災担当者が実施する平時の備蓄品管理

項目 内容
棚卸し(年1回) 水・食料の賞味期限・状態確認
各種 備蓄の使用期限管理、動作点検(ヘルメットや発電機)
入れ替え 賞味期限切れの水・食料の入れ替え
訓練 BCP訓練・防災訓練での災害対応用備品使用

100人分の水・食料を保管するのに必要なスペースはどれくらい?

荷崩れしない高さで最小のスペースで保管する場合、100人分×3日分の水・食料を保管するのに必要なスペースは、最低でも2パレット分(4.84㎡=2.92畳=1.46坪)です。

・保存水1人あたり3ℓ×3日分(※500㎖のペットボトルを想定)
100人分=段ボール75ケース(500㎖×24本入り)
重量:13kg/ケース
ケースサイズ:W369×D249×H220mm

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・1人あたり3食×3日分(個包装タイプのアルファ化米を想定)
100人分=段ボール18ケース
重量:6.3kg/ケース
ケースサイズ:W420×D305×H180mm

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防災備蓄品を保管する防災倉庫

防災備蓄品は、普段使用している備品庫だけでなくコンテナ型の防災倉庫なども活用して、分散保管することが重要です。

具体的には備蓄品を使用するフェーズごとに分けること、同じ種類の備蓄品でも保管場所を分散することが重要です。

防災備蓄品を使用するフェーズごとに分ける

・災害発生時
災害が発生した時には、避難に必要な備品や安全確保のための備品、そして救助関連の備蓄品を使用することが考えられます。

これらの備蓄はすぐに取り出せることが重要ですから、コンテナ型の防災倉庫などに入れずにすぐに使えるようにしておきましょう。

ヘルメットは従業員ひとり1個使用するものですので、デスクの決まった場所に掛けておく等のルール化も有効です。

災害発生時、すぐに使う備蓄品の例

分類 備品
避難に必要な備品 ヘルメット、拡声器、懐中電灯・LEDライト
安全確保のための備品 三角コーン、立ち入り禁止テープ、反射ベスト
救助関連の備蓄品 担架、バール、ハンマー、ロープ、手袋、ゴーグル
包帯、ガーゼ、絆創膏、消毒液

・発災0~3日後 応急対応時
特に大規模災害の場合、発災後0~3日後は救助・救命活動の応急活動対策期間として、一斉帰宅を避け、社屋が危険でなければ従業員を会社内で待機させることが求められます。

災害の規模と被害状況にもよりますが、ここで必要になってくる主な備蓄品は、電気・水道・ガスなどライフラインの安全確認が取れるまでの備蓄品(特にトイレ)や、情報収集のための備蓄品、そして水・食料 です。

地震、水害、大規模停電など、さまざまなパターンの被災想定が考えられますので、あらゆるケースに対応できるよう、備蓄を保管する場所は分散化することが望ましいです。

例えば発災当日分は各オフィスのフロアに備蓄して、それ以降の分はコンテナ型の防災倉庫に保管すると、オフィススペースに隣接した備蓄倉庫のスペースを効率的に使用することができます。

分類 備蓄品の内容
ライフライン関連備蓄品:電気代替品 ランタン(置いて広範囲を照らせるもの)、発電機、スマホの充電器
ライフライン関連備蓄品:水道代替品 除菌ティッシュ、アルコールスプレー、簡易トイレ・消臭ポリ袋
ライフライン関連備蓄品:ガス代替品 カセットコンロ、ガスボンベ
※災害時に温かい食事を摂取できると安心します
情報収集のための備蓄品 ラジオ、電池
水・食料 1人あたり 水:3ℓ×3日分、食料:3食×3日分
衛生用品 体ふきシート、無水歯磨き、マスク、生理用品
宿泊のための備蓄品 ブルーシート、マット、ダンボールベッド、アルミシート、毛布などの保温グッズ

・発災3日後~ 事業復旧期
発災3日後になると、各社がすでにBCPを発動している頃でしょう。
事業復旧期に必要な備蓄品は、BCPで想定している被害想定によって様々です。

一方で、発災3日後からは、被災していない別の事業拠点から物資移動をすることができる時期になっています。

大規模災害が発生している状況では多くの物資が不足し入手困難になりますし、別の事業拠点からの物資移動をすることができれば新たな出費は抑えられます。

これまでの災害では、必要な物資が届かないことや、物資を届ける車輌が不足して復旧するまでに多くの時間を要してきました。

BCPで見落としがちなのが、災害時に物資輸送をスムーズに行う為の策を講じることです。

丸和運輸機関の「BCP物流支援サービス」は、事業復旧期に必要になる物資の移動をサポートするサービスです。
事業継続の為、CSRの為、様々な目的で使っていただけるサービスです。

同じ種類の備蓄品でも場所を分散して保管すること

例えば地震が発生すると、同時に火災が発生することも少なくありません。

また、「防災備蓄品を地下倉庫に保管していたが水害で備蓄品が浸水被害を受けて使用できなかった」という事例もあります。
防災備蓄品を使おうと移動させるのに、エレベーター使用を前提にしていると、災害による電力供給が止まった際に階段で荷物を移動させなければなりません

いろいろなリスクを想定して防災備蓄品の保管を行う場合に有効なのが、分散して保管を行うことです。

・ヘルメットは、デスクの決まった位置に掛けておくことをルール化する
・救助・避難関連の備蓄品は、すぐに使用できるように各フロアに設置する
・備蓄している保存水や食料は、配布を念頭に従業員一人分ずつに段ボールに分けて、フロアごとに分けて保管する

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防災倉庫の中身

防災倉庫を活用するメリットは、オフィススペースにある備蓄倉庫のスペースを圧縮できるというところにあります。

災害発生時にすぐに必要になる、「避難に必要な備品」「安全確保のための備品」「救助関連の備蓄品」以外を防災倉庫の中身として検討することが有効です。

その際に、従業員の社内泊用備蓄品(水・食料や簡易トイレなどの衛生品)についても、「2日目以降の分は防災倉庫で保管する」「下層階のフロアの分は防災倉庫で保管する」など、備蓄品は分散して保管することをおすすめします。

災害への備えは3日分が基本

発災直後は、交通網の寸断等により、行政からの公的物資などの配給が3日以上到達しないことが想定されます。
最低でも3日分の食料品の備蓄品が必要です。

その際、主食+主菜+αを意識しながら、普段の生活で活用している品目を中心に備えましょう

ローリングストックとは

ローリングストック(循環備蓄)は、防災備蓄品の管理に大変有効な考え方です。
一般的には「個人宅の備蓄品を普段より多めに備え、古いものを平時に消費しながら減った分を買い足す」というものです。
このローリングストックの考え方を企業備蓄や自治体備蓄にも拡大する取り組みがあります。

ローリングストックのメリットは、3つあります。

1つ目は、防災備蓄品購入のコストが安くなることです。
防災備蓄品は長期保存の加工をしてあることも多い為、通常買う物品よりも値段が高くなりがちです。

2つ目は、廃棄・寄付にかかる管理と、コストがなくなることです。
特に食料備蓄の場合、近年はフードロス対策として賞味期限切れ前に寄付したり、
再販売業者に販売したりすることがあります。

寄付・廃棄は対応事業者までの輸送コストは寄付する会社が負担するので、数量によっては思わぬ輸送コストがかかることがあります。
廃棄する場合でも、特にアルファ化米などはプラスチックスプーンが個包装に添付されていることも多く、意外な廃棄コストがかかってしまうこともあります。

ローリングストックをしていれば、寄付・廃棄がそもそもないので、備蓄品管理担当者が寄付・廃棄のための期限管理をする必要もありませんし、寄付・廃棄コストも発生しません。

3つ目は、災害時に「使い慣れたものを使用できる安心感」を得られることです。
「使い慣れたものを使用できる安心感」は、個人宅でのローリングストックで言われるメリットです。

企業のローリングストックの場合はさらに、普段から防災備蓄品の払い出しと入荷が循環して行われるため、普段の防災備蓄品の払い出しが「備蓄品配布訓練」の役割を果たし、スムーズに使用者に配布を行うことができる点もメリットと言えます。

関連記事:ローリングストックとは?重要性と取り入れるメリット&手順

企業備蓄のローリングストック

企業備蓄のローリングストックについて取り組みやすく効果が大きいのは、水や食料のローリングストックです。
「会社に福利厚生としてウォーターサーバーを置いている」「来客用にペットボトルの水を買っている」という企業があれば、ローリングストックのチャンスです。

自治体備蓄のローリングストック

自治体備蓄のローリングストックは、民間流通在庫を災害対策物資として活用するスキームです。

すでにいくつかの自治体で、民間流通在庫を活用したローリングストックを実施している例があり、例えば「民間事業者は平時に自治体と取り決めた品目・数量の在庫を確保し、災害発生時に自治体へ提供する」というものです。

自治体は初回の備蓄物資購入費と、平常時の保管委託料を支払うというスキームで運用されています。

使用期限到来に伴う寄付・廃棄コストの節減になる上、保管スペースを圧縮できることや、棚卸などの平常時の管理負担軽減などのメリットがあります。

保管スペースはどうやって作る?【物流倉庫管理のプロ直伝】備蓄品保管のポイント

【基本の3S】整理・整頓・清掃

整理・整頓・清掃の頭文字をとって「3S」は、快適な職場づくりのキーワードとして誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。

保管スペースの作り方も、まず第一歩は基本の3Sから始まります。

分類 項目 内容
整理 不要なものを処分 ・使用期限切れの備品、賞味期限切れの食料を寄付・廃棄する
整頓 種類ごとに置く、まっすぐ並べる ・軽量ラック・棚用落下防止ベルトなどを使用する
・空いている棚に入れるのではなく、種類ごとに置く
・水や食料は入れ替えも発生するので取り出しやすい位置に設置する
清掃 ゴミ・汚れが無いように清掃する ・害虫被害などが無いよう、食料は床に直置きしない
・食料は基本的に滅菌処理してパック詰めされているが、稀に雑菌が入ってパックが爆発することがあり、定期的な状態チェックが必要
・段ボールは水濡れに弱い。カビやすく、湿度管理に注意

備蓄品の入れ替えや数量確認がしやすいように保管する

平時の備蓄品管理では、少なくとも年に1回の棚卸・状態確認を行うほかにも、訓練での出庫や、使用期限・賞味期限切れ備蓄品の入れ替えなど、意外に備蓄品の数量を確認する機会が多いものです。

入れ替えや数量確認、整理・整頓・清掃をし易くするためには、整理用の軽量ラックやカゴ台車を使用することをお勧めします。

特にカゴ台車は荷物の移動に適しており、災害発生時に同フロアであれば、一人で一度に複数ケースの備蓄品を移動させることができ、備蓄品の配布に便利です。

備蓄品を数える単位に注意

備蓄品の棚卸をしていると、「前任者から引き継いだ数量と大きく数量が異なるという問題に直面する」と頻繁に相談を受けます。

その原因の多くが、備蓄品を数える単位、ロットの認識の違いです。

例えば在庫表に鉛筆1、と表記があった場合、実際に鉛筆は何本あるでしょうか?

単位 鉛筆の本数
バラ 1本
ボール 1ダース(12本)
ケース ダンボール1箱(数百本)

これと同じ数え間違いが起きやすいのが、生理用品です。

実際に配布するときには、バラ(1枚)では配布しません。
おそらく、小売店で売られているような包装(ボール)単位で配布するはずです。

生理用品はボール単位で数えるのが適切かと思いますが、多くの備蓄品を管理していると、担当者の引継ぎなどで備蓄品を数える単位がよく分からなくなることが発生するようです。

有効な対策は、商品マスタを写真付きで管理しておくことです。
在庫表の「1」が、備蓄品のどの包装単位のことを示しているのか写真付きで管理しておけば、引継ぎ時に備蓄品の現物を確認する時間がなくても、後から時間をかけて棚卸をしながら備蓄品の棚卸をすることができます。

賞味期限切れの食料を見つけたら

SDGsの取り組みとして、備蓄食料品のフードロス対策に取り組む自治体・企業が増えています。
フードロス対策をする上で具体的に検討されるのが、寄付や再販売事業者への販売です。

・寄付
賞味期限内の備蓄品や、賞味期限まで一定の猶予がある備蓄品を受け入れてもらえることがあります。

・再販事業者への販売
賞味期限内の備蓄品だけでなく、一定期間なら賞味期限を過ぎていても買い取ってもらうことができる場合があります。

注意する点としては、寄付や再販事業者まで備蓄品を運ぶ運賃は、備蓄を所持している事業者や自治体が負担する必要があるという点です。

備蓄品のフードロス対策でお困りの場合は、「AZ-COM防災備蓄管理ワンストップサービス」をご活用ください。
寄付や再販事業者まで備蓄品を運ぶ運賃の見積もりも作成可能です。

防災備蓄品を置くスペースをよく検討することはBCP対策になる

防災備蓄品を置くスペースの捻出を検討する中で、「備蓄品を使用するフェーズごとに分けて、防災備蓄品を置くスペースを検討する」という検討項目がありました。

防災備蓄品を置く場所についてよく検討し平時の管理を徹底することは、そのプロセス自体がBCP対策にもなります。

防災備蓄品の保管スペース

「備蓄品を置く場所がない」という悩みをお持ちの方に、防災備蓄品の保管場所やスペースの作り方を解説しました。

実際に防災備蓄品の保管スペースを捻出しようと棚卸や備蓄品の整理・整頓を始めると、意外に重労働で、はかどらないということもあると思います。

丸和運輸機関の「AZ-COM防災備蓄管理ワンストップサービス」では備蓄品を保管するスペースがないとお困りの企業・自治体からの相談を多く頂きます。

どうやってスペースを捻出するのかのご相談から、備蓄品の購入、捻出したスペースへの納入までしっかりサポートできるサービスで、荷物の移動など重労働は全て私たち物流会社が実施します。

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